議題の多元化から見るASEAN地域の協力分野の拡大
汪新生
volume 10


NEWS


近年、ASEANを主とする地域の協力構造が発展をとげ、これまでのASEAN外相会議、首脳会議、各専門部会において議題にあがっていた地域協力が多元化の傾向を呈している。従来の協力構造は、加盟国における政治、経済、安全保障分野の協力であったが、社会生活の各方面の問題における全方位的な共同管理体制へと拡大してきている。この傾向は一つに、経済のグローバル化を背景として、国家間の相互援助や交流が密になってきたためであり、また、加盟国内で発生した社会問題が国際的な共通の議題となってきたためである。問題解決への道が国家や政府の能力を越えるようになってきている。また、地域一体化のメリットである相互援助が折りしも、国際的な共通議題の議論や共同管理への新しい原動力となり、地域協力組織や協力構造の効果を促進しているのである。
2000年以降の東南アジア地域主要政府間組織と対話メカニズムの議事を振り返ると、非伝統領域における国家レベルの協力分野が拡大をはじめていることが読み取れる。以下、注目すべき新しい分野について述べる。
1.人類の生存環境と資源開発の議題
発展途上国における経済発展は、時に効果を性急に求めすぎ、環境保護を無視している。経済がある一定の発展をとげる一方、この段階の後に待ち構えている環境悪化は、つまりは経済発展の障害となっていくのである。従って、経済と環境の協調をともなう発展とは、長期的な計画なのである。各国の環境保護基準と罰則は異なり、比較的大きな企業が部分汚染が、他の国家の生産に 消極的な外部からその国へと転嫁してしまうということがある。
ASEAN地域におけるこのような状況を防止するために、環境政策、政治政策の相互支持及び協力、環境に関する法律、法規、手順、政策及び実施における協力、経済の継続的発展を促進することを目指し、協議による問題解決機能を持つ、環境協力委員会を設立した。ASEANビジョン2020では、以下のことを採択している。「我々は一つの完璧な 」また、ハノイ行動計画(Hanoi Plan of Action,HPA)において、ASEAN域内での国を越えた汚染の防止、森林火災の抑制、生物の多様性の保護、水資源の保護等の問題に対し、さらに協力を強めていくことで、環境保護と発展の持続を促進し、また、中国-ASEANの自由貿易地域の構築を重視していくことで、経済と環境の協調的発展を目指す、とした。
危機解決と域内の人々の生存環境問題におけるもう一つの重点は、協調の発展が、大規模な自然災害と公共衛生危機における有効な手立てということである。これは、ASEAN加盟国が積極的に協議し、協調体制の構築を進めていかなければならない。
2004年12月に発生したインド洋大津波で、沿岸諸国は30万人以上の命が奪われ、インドネシア、インド、スリランカ、タイでは特に大きな被害を受けた。その中でもインドネシアは16万人が死亡、行方不明となった。2005年1月、ASEAN各国はジャカルタで緊急首脳会議を開催し、今後の問題について対策を協議した。
2005年4月23日、ジャカルタでアジア・アフリカ首脳会議が行われ、ASEANが発起人となり、共同声明を発表した。声明では、国家環インド洋における自然災害の被害を緩和するため、多種の災害に対する早期警戒システムの開発に投資する必要性をアピールした。声明の中で、「犠牲者を最小限にするための災害準備、予防等への対応メカニズムを伴った、多中枢の早期警戒システムの開発のための統合的戦略の構築」、「協調一致された地域システムの構築を推進しつつ、地域コミュニティの参加を基礎とした国内早期警戒システムの構築、更新」、「災害援助や緊急対応のための即応体制、情報交換ネットワークの構築、研究及びデータベースセンターの設立、最新科学技術の最大活用等の、地域及び国際レベルでの可能な限り迅速な対応メカニズムの構築による、集団行動の効率を高める手段と方法の探究」を表明した。また、災害緩和を目的とした文化、教育交流アジア・アフリカ諸国間における専門家間の、災害緩和のための文化、教育交流を促進し、同時に国際社会における被災国への技術、財政援助を歓迎するとアピールした。そして、各国が災害への対応措置を継続することも表明した。
2005年7月、第38回ASEAN外相会合において、法的効力を持つASEAN憲章制定と、災害管理、緊急対応のメカニズム等について協議された。会議では、「ASEAN災害管理と緊急対応協議」を採択し、ASEAN加盟国の協力がさまざまな災害に制度を保障するものとした。
2001年11月5-6日、ブルネイの首都バンダルスリブガワンで第7回ASEAN首脳会議が開催され、「HIV/AIDSに関する第7回ASEAN首脳会議宣言」及び、「HIV/AIDSに関するASEAN行動計画Ⅱ(2002-2005)」を採択した。これらは域内でのAIDSの感染拡大がもたらした問題への対応である。
2006年6月21-22日、「衛生に関する緊急問題へのASEANの団結」をテーマとした、第8回ASEAN保健相会議と、第2回ASEAN中日韓保健相会議がヤンゴンで開催された。この会議には、加盟国の保健相、国連駐ミャンマー機関職員、中日韓3国の衛生担当職員、諸外国の駐ミャンマー使節など100名以上が参加した。ミャンマーの国家平和発展評議会第一秘書テイン・セイン中将が開幕式の式辞で、我々は過去2年の間に、津波や鳥インフルエンザのような、立ち向かわなければならない公衆衛生に関する緊急事案を経験していると述べた。彼はASEAN諸国の団結と緊密な協力、共に問題へ立ち向かうことが必要であると強調した。また、今回の会議が、ASEANと中日韓3国の、衛生分野でのさらなる協力を推進するものであると指摘した。特に、第1回ASEAN中国保健相会議の中で第9回ASEAN中国首脳会議の達成を共通認識としたことをあげ、関係諸国が鳥インフルエンザ予防に向けて共に行動していく必要があるとしたのである。シンガポール衛生相コー・ブンワンは、中国の諺「遠くの親戚より近くの他人」を引用し、公衆衛生の緊急事案に対して、諸国の相互援助、協力強化が必要であると発言している。
上記の議題に対応し、ASEAN加盟国の継続的発展のために、資源の共同開発と利用も地域協力メカニズム建設への重要課題である。中でもエネルギーと食の安全への協力を強調している。
2000年7月3日、第18回ASEANエネルギー相会議がハノイで開催された。会議では、ASEAN地域におけるエネルギー供給の安全問題について協議され、ASEANの指導者がASEANエネルギーネットワークの可及的速やかな実現に向けて構想を練っていくことに同意した。
2002年10月21日、第4回ASEANエネルギーフォーラムがバンコクで開催された。フォーラムは、「21世紀のエネルギー持続」で、エネルギー発展の動向、ASEANにおけるエネルギー需要の動向、代替エネルギーの前景、エネルギー政策改革及びASEANエネルギー工業の発展と電子ビジネスの潜在的能力など、さまざまな専門的研究について議論された。
2004年11月30日から12月3日まで、第8回ASEAN石油委員会会議がフィリピンのマニラで開催された。
会議の席上で、フィリピンのアロヨ大統領が、各国の代表がASEAN地域における石油備蓄設備建設の実行性についての協議を呼びかけた。フィリピンのエネルギー省長官ラファエル・ロティリアは、石油備蓄地区の建設がASEANのエネルギー安全を保証し、ASEAN諸国全ての利益となるとした。しかし、ASEAN国家は統一の見解を期間中に出すことはできなかった。彼は、マニラ以北のスビック湾に石油備蓄地点の一つとし、民間団体や投資者が関心を持つような石油備蓄地となると述べた。アメリカのエネルギー省もこの計画を支持し、フィリピンエネルギー省を通して、政府に直接投資するか、石油製品の税収などの資金調達を提案した。
これ以外では、ASEAN、日本、中国、韓国で構成される、「ASEAN+3」の政策面での協調を強化し始め、エネルギーや食料分野での安全保障体制構築を目指している。第1回ASEAN+3エネルギー相会議が開催され、ASEAN+3のエネルギー面でのさらなる協力を表明した。日韓両国は席上で、石油備蓄制度における東南アジアへの資金提供及び技術協力がまだ構築されていないと表明した。不測の事態による石油情勢の混乱を避けるために、アジア版国際エネルギー機関加盟国が市場協調 石油備蓄制度問題の議論を進める 。中国は協力体制構築に積極的な態度を示した。中国関係機関の職員が日本の読売新聞の取材を受けた際、石油備蓄が実現したとなれば、資金調達や石油輸送ルートは多様化し、石油安全保障体制へ参加していくだろう。それはつまり中国の石油安全も確保したということになるだろうと話した。また、ASEAN+3体制の効果が最大限発揮されるだろうとも話している。
食料安全保障においては、ASEAN10カ国で8.7万トンの米の備蓄がある。しかし、20世紀90年代後半の、インドネシアの食料不足では、備蓄制度や機能における協力が完全なものではないことが明るみとなった。そのため、ASEAN各国はASEAN+3の連携をさらに進め、災害などの緊急時に、米や食料を確実に確保するための資金調達のための、東アジア緊急米備蓄システムの構築を提案した。
2004年10月8日、第4回ASEAN中日韓農林相会議がミャンマーの首都ヤンゴンで開催された。出席した各国農林相は、農業、林業、畜産業、水産業などでの協力強化を表明した。会議後発表された連合ニュースの公報では、大臣がASEANと中日韓の農業、漁業、林業などでの協力強化について満足していると表明し、ここ2年(2004、2005年)での、新しい協力項目を歓迎する、とした。会議では、アジア米緊急備蓄や、鳥インフルエンザと林業の関係についてさらに協議した。
2.社会発展と福利保証の議題
ASEAN加盟国の経済発展レベルは不均衡状態にあり、国内での地域差も顕著なものになっている。発達から取り残された地域の社会発展の遅れは、地域の一体化の進呈において重大な影響をおとしている。そのため、各国の社会事務協力が、ASEANが直面している新しい課題となっている。
2000年6月、第33回ASEAN外相会議がバンコクで開催された。加盟10カ国の外相が「 社会問題解決協力 共同声明」を採択した。タイ外相长素林·比素万は、署名式典後に、ASEAN加盟国外相がこの宣言に署名したということは、改めてASEANの緊密な協力を表明したことになり、共に挑戦していくことを示した、と話している。
会議期間中、ASEAN各国の外相は、ASEANが直面している大きな挑戦として、アジアの金融危機後に引き起こされるであろう一連の社会問題(越境犯罪、薬物取引、人身売買等)を考えていた。これらの問題の解決には、ASEANの新世紀における発展と、加盟国の関係が直接影響しているのである。ASEAN内部の各分野における協力の促進と発展は、本会議における主要な議題であった。共同声明では、金融危機後にさらに発生する多くの社会問題とグローバル化に向けてのさまざまな挑戦に向けて、ASEANにおける「人をもって資本となす」全面的計画の制定が必須であり、人的資源開発及び、貧困や薬物取引、人身売買等の越境犯罪活動の撲滅に尽力することが、ASEANの繁栄と「国家共同体」の発展、一大市場の統一へとつながっていくとした。世論は、一世紀に渡る会議の集大成を受けて、本会議の議題が各国、各地域のさまざまな具体的な問題について、時代に即した議論が及んでいることを注目した。特に、本会議において人的資源の発展の促進が重要な論点となり、ASEAN国家が既に金融危機の影響から脱し、協力領域がさらに深い段階へと進んだことが表明された。
同時に、本会議で1998年7月にマニラで採択された、「ASEAN 無毒品 共同声明」の加速的実施を決定し、2020年としていた薬物の生産、加工、取引、及び使用の撲滅を5年繰り上げた。
また本会議の前に2002年2月にマニラにおいて、第2回ASEAN農村発展、貧困対策 会議が開かれ、加盟国における農村の貧困対策について専門的な協議が行われた。
2001年8月1~3日、シンガポールにて第4回ASEAN社会福祉事務部長会議が開催された。この会議では、第2回ASEAN非公式首脳会議で採択されたASEANビジョン2020構想について回顧した。本構想では、ASEANが一つの団結した社会を構成することを提唱している。本会議の重要な成果は、「ASEANの児童における 宣言」を発表したことである。「宣言」では、ASEAN地域の児童に対する福利厚生の発展と保護を促進を説明し、ASEAN各国の児童の生存発展の保護と地域協力のために、人々の生活環境の改善へASEANが努力を重ね、ASEANにおける経済社会の発展協力、児童の成長に長期的な影響を及ぼす貧困や飢餓などの禍根を削減し、児童の福利と健康な生活を推進するものとした。
「宣言」は原則と具体的方案を以下のようにまとめた。
(1)原住民のコミュニティにおける伝統や習俗に基づき、原住民の児童の権利の尊重と承認を保護することを包括し、全ての児童の権利を承認し、尊重する。
(2)ASEAN加盟国における児童の権利の尊重を奨励し、児童の権利に関する情報を共有するとともに、異なる国家、異なる宗教文化、社会的価値を考慮する。
(3)特別な需要を有する児童が社会的に適切な地位の下、独立した生活ができるように機会を得ることを承認する。
(4)児童や若者の観点から、その権利を主張し、参加コミュニティの発展創造の機会を注視する。
(5)児童へ権利を与えることを奨励し、彼らがグローバル化に挑戦し、グローバル化がもたらすチャンスをつかむよう善処する。
(6)ASEAN各国の成年の就業機会のためには、安定した家庭が児童の社会発展と心身発達の鍵とするものである。
(7)家庭援助や生涯教育方案を制定し、児童の家庭での養育や、児童の保護に協力する。
(8)帰るべき家のない児童や、家庭のない児童に対し、それに代替できる家庭や家庭的な雰囲気保育所の設置を含めた適切な処置をする。
(9)ASEANにおける児童保育専門の人材を育成し、児童の早期教育などを重視することにより、交流を図る。
(10)効果的な識字教育を強化し、ASEAN各国の児童たちのすばらしい未来のために、教育情報や通信技術獲得の機会を促進する。
(11)児童の初歩的な保健サービスを強化する。
(12)学校やコミュニティなどで暴力や虐待を受けたり、人身売買により搾取受けている児童を保護し、また、武装による攻撃から児童を保護する。
(13)災難や自然災害の発生時において、児童の救援や救済サービスを優先し、彼らの苦痛を軽減し、できるだけ早く家庭の団欒を与える。
(14)児童向けの青少年司法制度を制定し、児童の権利を充分保障し、児童が新しい社会へとけ込んでいくことを推進する。
2003年10月7日、第9回ASEAN首脳会議がバリで開催された。ASEAN10カ国の指導者が、2020にまでにEUに類似した「ASEAN共同体」を成立させることに署名した。これは、ASEANが政治、経済、安全保障、社会、文化の全面的な協力体制へと進んだ歴史的新段階であり、地域の一体化への大きな一歩となった。これは、「ASEAN第二協和宣言(バリ・コンコードⅡ)と呼ばれ、「ASEAN安全保障共同体」、「ASEAN経済共同体」、「ASEAN社会・文化共同体」の3本柱で構成されている。宣言では、社会発展分野での協力により、勢力の小さいコミュニティや農村人口の引き上げ、そして特に婦女、児童の地域コミュニティにおける生活水準の引き上げを強調した。
2004年6月30日、ジャカルタで開催された第37回ASEAN外相会議では、「ASWAN地域におえる婦女暴行行為根絶宣言」について協議された。
同年12月17日、第1回ASEAN中日韓社会福利与发展部长会議がバンコクで開催された。会議では、東アジアが共に社会に配慮していくことで、各国の社会福祉分野の交流、協力について協議された。会議は、第5回ASEAN社会福利与发展部长会議が同時に行われた。ASEAN10カ国と中日韓三カ国の代表が参加し、「共に配慮する社会」をテーマに交流した。配慮ある社会の建設は、国家の文明レベルを体現していると言える。また、人類発展の理想でもある。この会議のテーマは、東アジア各国が社会福祉の発展分野においての協力を希望していることを表明しているのである。ASEAN社会福利与发展部长会議の席上、各国はASEAN社会・文化共同体により、行動計画を一致させた地域協力を強化することが、配慮ある社会の建設に結びつくとした。また、ASEAN各国における、女性、児童権益と社会福祉の保障、特に人身売買や性取引における問題に対し、共に挑戦していくことを発表した。したがって、各国が社会福利、人口、家庭と児童の発展分野における協力を強化し、国家や地域レベルでの協調発展により、堅固な社会基盤を作っていくことになった。また、ASEAN地域が一つの社会、文化共同体となることも決定した。その一つの目標が、直面している社会問題の解決なのである。ASEANは地域の内外で、双方向、多方面の協力を強化し、社会福祉事業の発展にさらなる努力をしていくものである。
2005年11月、第10回ASEAN首脳会議がラオスの首都ビエンチャンで開催された。この会議のテーマは、「団結し、経済の一体化、社会の進歩の促進、ASEAN大家族の安全と活力の強化」であった。ASEANの指導者は、「ASEAN社会・文化共同体行動計画」と「ASEAN安全保障共同体行動計画」を採択した。これらの文書の重点は、域内における各分野のさらなる融合、そして、経済、文化、安全保障の共同体を3本柱としたASEAN一体化の進呈である。中でも、「ASEAN社会・文化共同体行動計画」は、地域における社会・文化の融合を主旨とした。社会福祉の発展には、小さなコミュニティの生活水準の向上、女性、児童、老人、障害者の社会的危機の減少、家庭、民衆、個人の貧困解決や社会福祉問題解決への積極的参加などの優先課題としてある。これを以って、配慮ある社会とASEAN社会・文化共同体の建設とするのである。各国の代表は、ASEAN内部の発展格差を縮小する努力をし、貧困などによる社会の格差を減らし、愛の手を差し伸べあう社会を構築すると改めて表明したのである。会議では同時に「ASEAN人身売買攻撃声明」も採択している。
3.文化建設、観光発展と人材交流の議題
熱帯気候による開発の不合理さや、違法貿易がグローバル化における同化やASEAN社会に生じる重大な変革への悪影響を及ぼしており、ASEAN各国の文化の流失、伝統習俗の急速な衰退、貴重な遺跡の消失などが起きている。ASEANでは、現代社会市場の主な作用である、大規模生産、消費者市場主義等の観念が大きくなるにつれ、人類の貴重な遺産や、自由、創造力、社会的公正、平和などが破壊されるという負の部分を追うようになっていると考えている。経済や技術的な原因も考慮すると、文化遺産の保護は一国だけではできず、ASEAN集合体の努力と国際社会の支援が必要である。ASEANでは、文化遺産や文化的権利の保護、そして両方を宣言することで、実質的進展をとげるものとし、域内の団結と密接な協力を持続していくこを決定した。
2000年7月、ASEAN10カ国の外相が、第33回ASEAN外相会議において、「ASEAN文化遺産宣言」に署名した。「宣言」は以下のように表明している。
「ASEAN10カ国は豊富な文化資源と文化遺産を有し、その生命力と完全な姿は保存、保護、宣伝する必要がある。文化的創造力と多様性はASEANの社会において生存し、発展を保障するものである。…ASEANの人民は地域における新しい秩序の建設を渇望し、その秩序が文化の機会均等や、文化の多様性、国籍、種族、性別、言語、宗教などで分けられないASEANの同一性の尊重をするものである。
「宣言」は「文化」と「文化遺産」の境界を以下のように定めている。
「文化」とは、それぞれの社会やコミュニティ特有の精神、知恵、感情や物質的特性が結合した集合体を指し、芸術や文学だけではなく、生活様式、価値観念、知識体系、彼らの創造力、伝統、信仰など各方面を網羅するものである。「文化遺産」とは、有意義な文化価値や観念を有する建築物や手工業品、遺跡、居住地、民間や口述で伝わっている遺産(社会民俗、民間伝説、言語、文学、伝統芸術、手工芸品、建築、芸術表現、遊戯、民族にける知識体系、神話、習俗信仰、宗教儀式などの、今に伝わる伝統)、文字により作られた遺産、通俗的文化遺産等を指す。」
「宣言」は協力の15の枠組みを制定した。主に以下をあげる。
1.ASEANと加盟国共同体は、ASEANにおける文化遺産の保護を進めていく。地域や国際的援助協力を有効利用し、重要な文化遺産について確認し、説明し、保護し、保存し、宣伝し、発展させ、後代へ伝えていくことがASEAN構成員の責任である。加盟国の主権や国家の財産を充分に尊重した上で、ASEANは、加盟国の文化遺産はすなわち東南アジアの文化遺産を形成するものであり、共に協力しながら保護する責任があるものとする。
2.国宝や文化財産を保護する。ASEAN構成員は、重要な歴史的意義のある文物を協力して保護し、また、国家の歴史や、建築学、考古学、人類学等の科学領域において重要な価値を持つ文化財産を協力して保護する。歴史的遺跡や文化景観、風景などの名勝地については、鑑定、確認し、保護をする。ASEAN構成員は、文化遺産保護に必要な措置を取る責任があり、武装衝突や侵略、その他の社会騒乱などによる人類や自然の破壊を避けなければならない。
3.貴重な生活伝統を保護する。ASEANの構成員は協力して、貴重な生活伝統や社会習俗を保護し、人類が自らの文化の権利を有することを尊重し、それぞれの生活伝統や社会習俗の伝承と実践の保護するものである。国家や地域の枠組みや、社会、文化、経済発展の枠組みの中で保護し、価値を発揚し、創造的な生活伝統を保っていくのである。また、各国は生活伝統の研究計画を立て、伝統を伝える人々の尊厳と知恵を見出し、創造的で多様性がある、さまざまな世界観や価値観を伝えていく。
4.古から今に伝わる、学術、芸術、知識遺産を保護する。古より、思想家、哲学家、芸術家、作家の中で傑出した人々は、ASEAN人民の道を示してくれている。彼らの保存、保護、宣伝は我々の活動の中でも重要なものなのである。
5.古から今に伝わる、通俗的文化遺産と伝統を保護する。大衆文化における通俗的表現形式は社会や文化の間で流通し、芸術、知識、社会学、人類学、歴史のさまざまな階層において、資源や基礎を提供している。ASEANは優れた通俗的文化遺産や伝統の保護を奨励し、支持する。
6.文化交流を強化し、異文化理解をさらに深める。
2000年8月12日、第9回ASEAN青年団会議がミャンマーのヤンゴンで開催された。会議では、いいかにして青年の役割を発揮させるか、自国の伝統文化を保護するかについて、また、第3回ASEAN青年事務長級会議の準備について協議された。
ASEAN各国の観光業の発展の促進は、地域文化事情の発展の重要な要因の一つであり、近年のASEAN地域協力の重要議題の一つである。ASEAN加盟国は、歴史文化遺産と観光資源の豊富なカンボジアにおいて、3回に渡り、越境観光問題について会議を重ねてきた。
2001年7月12-13日、第14回ASEAN観光懐疑がカンボジアの首都プノンペンで開催された。会議では、ASEANの観光戦略の実施、ASEAN観光サイトの作成、ASEAN観光の宣伝、国際、ASEAN内部の観光への刺激、民間企業におけるASEAN観光戦略活動の促進などについて協議した。
2002年11月4-5日、ASEAN加盟国の指導者が第8回ASEAN首脳会議において、「ASEAN観光協定」に署名した。協定の主旨は、さらなるASEAN観光業の発展の促進である。
2003年1月21-27日、第22回ASEAN観光フォーラムがカンボジアの首都プノンペンで開催された。ASEAN10カ国の観光相が期間中に、さらなるASEAN観光における安全強化について共同声明を発表した。声明では、ASEAN各国の観光部門が政府関連機関と密接に協力することを表明した。それは、対テロ対策と観光客の安全な観光環境確保のための、飛行場、港湾、さまざまな観光地における安全検査措置の強化を含んでいる。大臣たちは、大衆、メディア、外国政府向けの観光安全情報を提供する、ASEAN観光安全サイトの作成に同意した。また、2005年までにASEAN加盟国間における相互ビザ免除実施についても同意した。
2006年7月24-28日、マレーシアの首都クアラルンプールにおいて、第39回ASEAN外相会議が開催され、「ASEANビザ免除枠組協定」に正式に署名した。この協定に基づき、各加盟国の公民は14日間以内の観光目的であれば、ビザ申請を免除され、自由に域内を旅行することができるものとした。これは、ASEAN各国の地域が融合された共同体という目標への歴史的な大きな一歩であり、また、経済の一体化への動きを加速させるものとなるだろう。
事実上、ASEAN各国間における相互ビザ免除の協議はいくつか持たれており、締結国間の短期間の訪問におけるビザ免除はあったものの、長くても1ヶ月程度という規定があった。しかし、双方の協議に人々は非常に混乱を感じていた。本会議での枠組みの制定は、それらの協議に規範を与えるものとなったのである。この枠組みのもと、各国は自国の需要と調整できるようになった。
一般的に言えば、富裕国家は貧困国家の国民の来訪をビザによって厳格に規制しているが、ASEANの情況に照らしてみると、ビザ申請が最も厳格なのはミャンマーである。ミャンマーはフィリピン以外のASEAN加盟国国民によるミャンマー訪問にビザを要求している。それは、ミャンマー軍事政府の外部に対する疑念が多いことが原因である。今回はミャンマー外相も協議に参加し、署名したため、各国間の越境観光の全面的開放が実現し、大きな進展を見せた。また、もう一つ少し意外にも署名をしたのが、ラオスである。ラオスは開放的ではなく、以前はASEANのいくつかの国とのも相互ビザ免除の協議を行っていただけであった。しかし、本会議の席上でラオスは、強烈にASEANの方針に賛同することをアピールしたのである。これは、域内の観光業がもたらすメリットに期するところがあったことは明白である。しかし、その意義は大きく、中国とインドの二大経済体の奮起を呼ぶものとなった。ASEANは加速度的に一体となり、競争に生き残っていかなければならなくなった。ビザの制限緩和により、人材の流動を奨励することで、ASEAN各国間でさらに緊密な商業ネットワークが構築できるだろう。それを象徴するかのように、現在のASEAN主席、マレーシア外相Syed Hamid Albaは、協議の意義は、ASEAN各国公民の自由な往来という便利な条件によって、各加盟国の国民が本地域における帰属感を有し、ASEANの団結を促進し、2020年のASEAN共同体への実現を促進するものである、と述べている。
汪新生、中山大学東南アジア研究所教授 「东南亚纵横」2007年第三期
Kyoto Review of Southeast Asia Issue 10 (August 2008)
KYOTO REVIEW OF SOUTHEAST ASIA GRATEFULLY ACKNOWLEDGES THE SUPPORT OF THE TOYOTA FOUNDATION.
Designed and developed by SQUEAKYSTUDIOS for CSEAS
Kyoto Review of Southeast Asia
Issue 10 (August 2008)
© Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University
click to download PDF