『南海争端与国海洋法(南シナ海紛争と国際海洋法)』評

楊翠柏

volume 10

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(四川大学法学院、四川、成都610064

 

 アモイ大学南洋研究院博士生指導者の李金明教授が、南シナ海問題を研究した新著『南海争端与国際海洋法』が海洋出版社より200310月に出版された。これは李教授が我が国の南シナ海領土主権の擁護、そして南シナ海紛争の平和的解決の促進に大きな貢献を果たすものである。

 本書は164000字、11章で構成されており。各章は、南シナ海主権紛争の現状、21世紀の南シナ海主権研究の新しい動向、我が国の南シナ海水域の由来、沿革と現状、ベトナムが公称する南沙諸島水域、現状と詳述、フィリピンが公称する南沙諸島水域の由来と解説、マレーシア、インドネシア、ブルネイが公称する南沙諸島水域、ミスチーフ環礁事件の全て、ミスチーフ環礁事件後のフィリピン軍の現代化とアメリカ訪問協議、近年のフィリピンの黄岩島での活動分析、『鄭和航海図』と中国歴史書における南沙諸島、南沙諸島海域における石油開発と紛争処理の前景、となっている。

 本書の研究成果は著者が南海問題研究に深く関わってきたことを反映しており、国内外の南シナ海問題研究分野における第一人者の地位を示すものとなった。以下に本書の着目すべき点を示す。

 まず、作者は国際法の基本理論『国連海洋法条約』に依拠し、南シナ海周辺国家の排他的経済水域と大陸棚の境界問題を研究し、我が国における南シナ海領有権を論証し、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどの論点と主張に反駁し、我が国の南シナ海領有権と南シナ海における海洋権益を擁護している。

 次に、特筆すべきは、著者が南沙諸島周辺国家であるベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ブルネイがそれぞれ公称している水域境界線について、歴史的かつ法理的考証と分析を進め、各国に対し我々が主張している境界について明解に示した。我が国の関係部門が対策や政策を制定する際の重要な根拠を提供したと言える。

 第三に本書のもう一つの特徴が、大量の図表を掲載し、本書の輝きをさらに増しているということである。これらの図表は読者や政府決定部門が、南沙諸島周辺国家が主張している水域についてはっきりと直視できるもとなっており、さらに研究成果は科学的価値も備えていることは明白である。

 第四に、作者は4章もの紙幅を費やし、中国とフィリピンにおける南シナ海問題と関連問題について論述している。4章は、「フィリピンが公称する南沙諸島水域の由来と解説」「ミスチーフ環礁事件の全て」「ミスチーフ環礁事件後のフィリピン軍の現代化とアメリカ訪問協議」「近年のフィリピンの黄岩島での活動分析」となっている。これらの論述から、作者のこの問題について独特の視点と思考の深さが読み取れる。著者はフィリピンに対しミスチーフ環礁事件を起こした過程、目的、さまざまな口実について総合的に論述、分析している。さらに、事件後のフィリピン軍の現代化とアメリカ・フィリピン間の軍事協力についても言及している。事件後、フィリピンは紛争範囲をさらに北へ拡大し、黄岩島事件を起こしたのである。作者は、フィリピンが言うところの「黄岩島は排他的経済水域内である」、「黄岩島とフィリピンは隣接している」などの間違った論点について反駁している。

 第五に、著者は南シナ海水域境界線の由来、沿革と現状について詳述している。我が国が1935年に地名呼称を公表した際、我が国の南シナ海の主権範囲を示したことは周知のとおりである。また、1947年に中国政府内政部方域司が南シナ海島嶼の範囲を11本の境界線で示したものを公開し、1953年に中国政府が11本から9本とした。著者は南シナ海における境界線を、政府が1996年に直線基線法を用いて定めた南シナ海の西沙諸島の領海基線と結びつけた。歴史と現実を結びつけつことにより、我が国が定めた西沙諸島の領海基線について歴史的かつ法理的な論証と分析を行った。南シナ問題研究における難点は、いかにして我が国の南シナ海における歴史的活動、歴史的論拠と現代の国際法を結びつけるかにある。李教授は非常に殊勝な探求をされたと言えよう。

 第六に、我が国のエネルギー問題が緊迫している現在、作者が我が国と南シナ海周辺国家の共同石油資源開発の実行性を考察したことは、今後、関係部門による南海政策の制定と南沙諸島水域問題解決への大きな参考となるであろう。つまり、本書はさらに現実的な意義を持つものとなるのである。

 第七に、著者の専門である『鄭和航海図』における南沙諸島について考証し、明代において名高い鄭和の七大航海(鄭和七次下西洋)が、南シナ海諸島の位置と範囲を具体的に理解していたという結論に至った。『鄭和航海図』では、海南島とベトナムの罗山(訳者注:Kulao Raysの間、広東の上川島の東側にある烏猪州と海南島万洲東南の海上にある大洲島の東に描かれている星屑のような小さな島々が、我が国の南シナ海諸島の中沙群島と西沙群島の永楽諸島と宣徳諸島を示しているとした。これは、他の関連書籍の記載とも一致している。著者はさらに清朝の記述についても論述し、南シナ諸島は中国人が最も早く発見し、最も早く経営に着手したのであり、古来より中国の領土なのだと指摘している。

 最後に、本書は我が国政府の関係部門、学術研究者、さらに南シナ海主権問題に関心をよせる中国人には一読の価値あるものである。仮に、本書に不足している部分があるとするならば、本書の章立ておいて余地があると言えるが、この点についても本書の学術的成果は覆い隠すに余りあるものである。

  

「南洋問題研究」2004年第4


Kyoto Review of Southeast Asia Issue 10 (August 2008)

Kyoto Review of Southeast Asia
Issue 10 (August 2008)

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